労務管理のススメ PERSONNEL MANAGEMENT

8-2 降級・降職に伴う給与の引き下げ

「人事評価による降級、降職により給与を下げても、問題はないでしょうか。」という問い合わせは労基法の減給の制裁に関係してくることもあり非常に多いものです。

会社としては、その社員を役職者としては不適格と判断し、人事考課で降職としたとしても、当人は、それは恣意的な降職であり、制裁としての減給ではないかと思われてしまいがちです。

減給の制裁は、本来支払わなければならない給与を制裁として一部支払わなくて良いとする制度です。しかし制裁があまりにも窓意的に行われると給与の全額払いの原則に反するので、金額が制限されています。その上限は、1回の事案につき平均賃金の1日分の半額以下および月給の10分の1以下です。
ところが、減給そのものは人事評価によっても起こります。課長が人事評価により降職となれば、今までの課長手当はなくなり、給与の減額となることは必至でしょう。 しかしこの減給は、その人が課長としてふさわしい能力をもっているかどうかの評価であり、たとえ不祥事に対する評価が含まれているとしても、懲戒処分の一つである制裁ではなく人事評価の結果にすぎません。
判例も、仕事上の評価によって運転手から助手に格下げとなった事例では「賃金の低下はその労働者の職務の変更に伴う当然の結果であるから法第91条の制裁規定の制限に抵触しない」と判断しています(昭260314基収518)。
いずれにしても、給与は社員にとって最大の労働条件です。人事考課の結果により引き下げが行われるにしても、収入の急激な低下をもたらさないよう段階的な手当の削減に努めてほしいと思います。

突然の降級・降職は避け、定時の人事評価を経てから実施するのが望ましいといえるでしょう。