安衛法で規定きれている様々な事項に対する違反行為には、罰則が設けられています。たとえば、事業者に対して労働災害防止措置を義務づけていますが、これを怠ると労働災害の発生の有無を問わず、刑事責任が科せられます。
一方、安衛法では罰則のない規定も数多くあります。条文が「……のようにしなければならない」「……に努めなければならない」となっている、いわゆる「努力規定」といわれるものです。なかには、「罰則がないなら規定を守る義務もない」と誤った判断をする場合がありますが、決してそうではありません。罰則規定のあるなしにかかわらず、規定されている事項については遵守する必要があるのです。
なぜなら、安衛法上の罰則に値する行為が無いため、刑事責任を免れることができても、それとは別に民事上の訴えを起こされるケースは珍しくなく、そのような場合は事業者側にたいがい不利な結果となるからです。
罰則については、本書の各項目においてもふれてきましたが、その違反の内容の程度によりおもに次のようなものがあります。どのような行為を行うと以下のような罰則を受けるかについては、以下にその主なものを掲載しておきます。
1. 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
製造等禁止物質(黄りんマッチ、ベンジジンおよびその塩など)を製造等したもの
2. 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
許可なく特定機械等を製造したもの
個別検定、型式検定を受けないもの
3. 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
作業主任者を選任しない事業者
4. 50万円以下の罰金
総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医を選任しない事業者
健康診断結果を労働者へ通知しない事業者
安全衛生教育を行わない事業者
事業者が講じる労働災害防止のための措置を守らない労働者