労務管理のススメ PERSONNEL MANAGEMENT

1-2 労働条件を引き下げる改定とは

1. 就業規則の一方の都合のみで変更できない

1. 就業規則の改定の条件

企業経営の環境は変化します。時には厳しい不況の中にあって、賃金などの労働条件を変えていかなければならないときもあります。しかし、労働条件は契約の一種であり、一方の都合だけで賃下げするなどの条件の改悪はできません。このような改悪を「不利益変更」といいます。 しかし、企業も生き残りをかけてあえて「不利益変更」を社員にのんでもらわなければならないときもあります。そのような場合は変更するための「事前検討」や「合理的な理由」が必要となります。それは、

  1. 変更前の制度についてどのような問題があったのか
  2. 社員が被る不利益の程度
  3. 不利益変更と関連して行われた労働条件改善の有無
  4. 労働組合等との制度変更についての交渉の経緯や他の一般社員の反応
  5. 同種問題についての世間一般の状況
  6. 特に賃金、退職金等の重要な労働条件については、「高度の必要性に基づく合理性」が必要

また、労働契約法では就業規則の変更について、判例における合理性判断の要素が整理され、次の4つが要素が明示されている。

  1. 労働者の受ける不利益の程度
  2. 労働条件の変更の必要性
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 労働組合等との交渉の状況等
2. 実際に不利益変更を行う場合

不利益変更を行う場合は、原則として、個々の社員との同意が必要です。しかし、規模が大きい会社では、一つひとつ社員から同意書を取るための説得は困難な作業です。そこで上記に示した内容を検討して、合理的な内容で就業規則の変更を行います。合理的な内容であれば個々の社員の同意がなくても変更できますが、団体交渉や職場代表者との協議などの正当な手段によって対応することが前提です。