人事賃金制度のススメ SALARY SYSTEM

1-7 諸手当分析で賃金制度のゆがみを把握する

賃金制度の見直しについては、まず賃金全体の構成を設定することから始めます。賃金は所定内賃金と所定外賃金から構成され、さらに所定内賃金は基本給と手当に分解されます。
賃金制度を見直す際には、手当の見直しから始めます。基本給を設計した後で手当を見直すと、基本給の見直しを再度行なう必要が生じる場合が多いためです。

賃金の基本的な考え方は、職務・役割基準です。しかし、一方では生計費に対する配慮も必要です。

手当は、生計費配慮部分を残し、支給意義のなくなっているものは廃止し、新たに設定が必要なものは設定します。また金額についても、世間相場や企業の考え方に基づいて見直します。

属人的なものは家族手当や住宅手当など、生計に必要な最低限の手当に絞り、非属人的である役職手当と合わせ3種類程度で運用するのが妥当です。

賃金構成

1. 役職手当

役職手当は、手当の中で最も重要な意味を持ちます。役割に対する評価は基本給にも反映されますが、役割の大きさ、管理する人員の範囲、残業見合い分を加味して決定します。
多くの企業で、管理職になって残業手当が支給されなくなるために、月例賃金が下がってしまう傾向が見られます。管理職がやりがいと魅力あるものにするためには、役職手当は厚めに設定することが望ましいといえます。

2. 家族手当

家族手当は、世帯形成に合わせて生計費の補助をする属人的な手当です。
配偶者及び子供の数に応じて設定します。扶養対象となる祖父母を対象にする企業もあります。
ここでは、対象範囲を明確にして、健康保険で確認するようにします。子供の扶養については、18歳までを対象にするのが通常です。家族手当は時間外手当の算定から除外することができます。

3. 住宅手当

住宅手当は、世帯主、準世帯主に対して支給します。親元から通勤する社員に対して支給するか否かは企業によってまちまちです。
世帯主の確認は健康保険で行ない、準世帯主の確認は住民票で行ないます。
住宅手当は、一定の条件を満たせば時間外手当の算定基礎から除外することが可能ですが、全員一律部分が含まれている場合には、除外が難しいといえます。

4. その他手当

精勤手当(皆勤手当)については、支給意義が薄い手当の典型例です。
製造業においては、公的資格が職務上重要な場合があります。このような職種においては、貢献に応じて資格のランク付けを行ない、一定金額を支給することは望ましいといえます。

各種諸手当の相場は、地域ごとの商工会議所や中小企業家同友会などで、定期的に調査を行っている資料が参考になります。