自社の人事考課制度の問題点を整理する場合、2つの視点から検討する必要があります。
第一は、経営サイドの視点です。経営者、会社が社員に期待し求める人材像が、人事考課制度の中で明確に示されているかどうかです。
第二は、社員にとって納得性の高い人事考課制度になっているかどうかです。
経営者、会社が社員に期待し求める人材像については、経営者インタビューや、管理職に対するインタビューで抽出することができます。
また、社員の意見を吸い上げるためには、アンケート調査が有効です。社員のアンケート調査結果は、経営者、経営幹部に対して今後の人事考課制度構築に関して大きなヒントを与えてくれます。
概ね50人以上規模の企業においては、職務分担が明確になってきます。職務基準、役割基準を作成し、一般職においては期待する職務範囲や習熟度、管理職においては遂行すべき役割基準を明確にすることが望ましいといえます。
ここで抽出された職務基準、役割基準の中分類を人事考課表に盛り込むことにより、職務(役割)重視型の評価制度になります。
この職務基準、役割基準を示すことが、会社の社員に対する期待を明示することになります。
実態
- 職務分担、役割分担が明確になっている、あるいはなりつつある
- 組織風土や行動基準は安定、定着している
人事考課
- 職務や役割の遂行度が評価の中心となる
中小企業においては、人に仕事がついて回るという傾向があります。また社員の入社退社が多く、組織風土が安定しないという特性があります。
また、会社の歴史が浅く、社員の行動規範を明確にして徹底したい企業や、歴史が古く組織を活性化したい企業も同様です。
このような企業は、行動規範面にウェイトを置いた評価基準の設定が望ましいといえます。
この場合は、情意(態度)評価やコンピテンシー(優秀者の行動規範)の活用が有効です。
実態
- 人材不足のため人に仕事がついて回る
- 中途採用が多く組織風土や行動基準が安定しない
人事考課
- 情意考課や行動面、意識面の評価が重要な意味を持つ
ただし、いずれの場合においても、「職務・役割」と「行動規範」の組み合わせで評価制度を構築すべきであることに変りはなく、重視すべきウェイトの違いがあるという点に留意すべきです。