労務管理のススメ PERSONNEL MANAGEMENT

2-1 採用時の提出を求める書類と注意ポイント

採用が決定した人には、会社の人事管理上の必要書類として

  1. 住民票記載事項証明書
  2. 身元保証書
  3. 誓約書
  4. 前職がある場合に「年金手帳」と「雇用保険被保険者証」
  5. 入社した年に前職がある場合は「源泉徴収票」

などの書類の提出を求めるのが一般的です。
採用決定者の提出書類については、就業規則に必ず定める事項ではありませんが、手続きを間違いなく行なうためには必要です。以下に、各書類の必要性と注意事項をまとめておきます。

1. 住民票記載事項証明書

採用時に現住所や生年月日を確認するための書類を提出させることが多いようですが、注意しなければならないのは、行政指導により「住民票」や「戸籍謄本」「戸籍抄本」などの戸籍に関する書類を提出させることはできないということです。
通勤手当の支給で現住所の確認が必要であるという場合は、本籍地の記載のない「住民票記載事項証明書」の提出を求めてください。
また、満18歳未満の年少者については、年齢を証明する書類を事業場に備えつけることが労基法第57条により義務づけられていますが、この場合も「住民票記載事項証明書」でよいとされています。

2. 身元保証書

身元保証書とは、採用した社員の行為で会社が損害を受けた場合、本人に弁済能力がない、または不足する場合に、本人に代わって身元保証人が会社に対して損害賠償するという「保証人と経営者」の問で取り交わす契約のことをいいます。
この契約については、次のような制限が設けられています。

1. 有効期間は原則3年間

入社時の身元保証書は、退職するまで有効だと勘違いしていることが多いようですが、身元保証契約には有効期間があることに注意してください。有効期間は原則3年間で、5年間と定めた場合は5年間とすることができます。自動更新はできないため、必要に応じて更新手続が必要となります。

2. 会社の通知義務と保証人の解除権

会社は、社員に業務上不適切または不誠実な行為があり、身元保証人に責任が及びそうな場合、あるいは社員の職務や働く場所に変更があり、身元保証人の責任が重くなりそうなときは、身元保証人にそのことを通知する義務があります。この通知を受けた身元保証人は、その後の身元保証契約を解除することができます。たとえ通知がない場合でも、この事情を知ったときは解除できます。

身元保証書の例

身元保証書

3. 誓約書

会社に入社した限りは、就業規則をはじめとした諸規程やルールなどを誠実に守り、仮に違反した場合は会社の処分に従う、という誓約書を提出してもらいます。多分に精神的な要素が強いといえますが、会社と社員の信頼関係を築くためには必要な書類です。

4. 健康診断書

常時使用する社員を採用したときは、健康診断を受けさせることが必要です。ただし、本人が3カ月以内に実施した健康診断書を会社に提出した場合は、受診させる必要はありません。また、この健康診断は、採用選考時に応募者の採否を決定するための資料ではなく、社員の適正配置、今後の健康管理に役立てるために実施するものです。

5. 年金手帳などの書類

「年金手帳」や「雇用保険被保険者証」は、社会保険の加入手続きに必要となり、「源泉徴収票」は年末調整(所得税の清算)の事務を行なう場合に必要です。この他に、「通勤交通費」や「家族手当」の申請書、「給与振込同意書」など、採用時に必要となる書類は多く、しかも会社ごとに様々です。 これらをすべて就業規則に規定する方法と、「その他、会社が提出を求めた書類」に含めるとする方法があります。
採用時の提出書類を定めることはもちろんですが、それらの書類をいつまでに提出すべきかの期限も定めておく必要があります。定められた期限内に、正当な理由なく提出しなかった者については、採用を取り消すことがあることを明記します。

採用決定者の提出書類の規定例

第○条

社員として採用された者は、採用後2週間以内に次の書類を提出しなければならない。ただし、会社が指示した場合は、その一部を省略できる。

  1. 住民票記載事項証明書
  2. 身元保証書
  3. 誓約書
  4. 健康診断書(3カ月以内)
  5. 前職がある場合は、年金手帳、雇用保険被保険者証
  6. 採用された年に給与所得がある場合は、源泉徴収票
  7. その他、会社が提出を求めた書類
2 前項の書類を正当な理由なく期限までに提出しなかった場合は、採用を取り消すことがある。
3 提出書類に変更が生じた場合は、2週間以内に届け出なければならない。